「ウールをTシャツと一緒に洗ったらメチャクチャ縮んじゃった^^;」
こんな経験をされた事がある方、多いかもしれません。
同時にこんな疑問が湧いてきたでしょうか。
「なんでTシャツは大丈夫なのにウールだけこんなに縮んだんだ?」
と言う事で今回は「ウールはなぜ縮むのか?」そんな疑問にお答えする記事でございます。
ウールが縮む原因はスケール
出典:日本テキスタイルケア協会
「スケール」
いきなり聞き慣れない言葉が飛び出してまいりました。
写真はウール繊維の電子顕微鏡写真なのですがウールと言う繊維は表面がツルツルではなく写真のようにウロコのような物で覆われた構造になっています。
このウロコのような物の事を「スケール」と言います。人間のキューティクルのような物です。
さてさてこのスケール君。乾燥状態では写真のようにバッチリ閉じているのですが水に濡れると、、。
出典:日本テキスタイルケア協会
こんな感じで開きます。松ぼっくりが開いたような状態と言えば分かりやすいでしょうか。
ピンときた方もいらっしゃるかもしれません。
ウールの衣類を水につける→スケールが一斉に開く→洗濯機で激しく洗う。
どうなるか何となく想像できますね。
スケール同志がグシャグシャに絡み合い、ビックリするくらい縮みます。そして絶望的に硬くなります。
この現象を難しい言葉で言うと「フェルト化収縮」なんて言ったりします。
幼稚園の園帽やフェルト帽何かは「フェルト化収縮」を逆手に取ったものです。
あれはわざと「フェルト化収縮」を起こした生地を使って製品化しているんですね。
「ウールは濡れた状態で揉んだり、激しく動かしたりすると縮み、硬くなる。」
今日はこれだけは覚えて帰って下さい。
スケールの良い所
出典:日本テキスタイルケア協会
さてすっかり悪役のスケール君ですがこの「水に濡れるとスケールが開く」という性質は決して悪い面ばかりではありません。
スケールが開くことにより余分な湿気を外に逃がしてくれるというありがたい効果が望めるのです。
私たちがウールのセーターを着ている場面を想像してみて下さい。
人間の体から出る湿気もまた「水分」ですから、それに反応して笠を開き衣類内の余分な湿気を外に逃がして快適な状態を作り出してくれる訳ですね。
羊から刈り取られた後にも関わらずこんな性能があるなんてすごくないですか?
「生きている繊維」「呼吸する繊維」「天然のエアコン」なんて言われる理由が良く分ります。
登山ウェアのベースレイヤーにウールが良く使われるのも納得です。登山時のウェア内の過剰な湿気は時に命に関わりますからね。
どうすれば縮まずに洗えるのか?
少し話がずれました。スケールを悪役ばかりにしておくのも気が引けたもので。
お次はどうすればウールを縮めずに水で洗えるのかを考えていきましょう。
「ウールは水で洗っても大丈夫だよ。」
こんな話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
ウールを水で縮めずに洗う事は理論上は確かに可能です。
勘の良い方ならお気づきと思います。
スケールが水で開く→激しく洗う→スケールが絡む→縮む
のですから
スケールが水で開く→スケールが絡まないように優しく洗うをしてやればウールを縮めずに洗えちゃうんです。
確かに理論上はウールは家庭でも洗えます。しかしながらこれが中々もってレベルが高い。
理屈は分かっていてもウールを縮ませず、しかも風合いを損ねずに家庭で洗濯するのはとっても難しいんですね。元の形にうまく整形してアイロンすることも中々レベルが高い作業です。
ですので長い間ウールは洗濯の事をよく理解している大ベテランやプロでない限り、家庭で洗濯するのはやめた方がいいと言われてきたんですね。
「ウールは水で洗っても大丈夫だよ」の話が説得力を持つようになったのはおそらく最近の事。
次のような技術の進歩が原因ではないでしょうか。
自宅でウールが洗える!防縮加工の進化
出典:日本テキスタイルケア協会
先ほども書いたようにウール製品の家庭洗濯は理論上は可能であるものの、特に縮みなどのリスクから長らく家庭での洗濯は推奨されていませんでした。
しかしながら、最近は技術の進歩により「自宅で洗えるウール」が登場してきているのを耳にしたことがある方も多いかもしれません。
では一体どうやって難しいウールの家庭洗いを実現したのでしょうか?
出典:日本テキスタイルケア協会
写真にご注目下さい。これまたウールを電子顕微鏡で撮った写真ですが本来あるはずの物がありませんね?
そう「スケール」です。
「スケールが原因で縮むんだからスケール取っちゃおう!」作戦というわけです。
最近、良く耳にする「洗えるウール」の多くにはこのようにスケールを薬品により取り除いてしまう加工や、繊維を樹脂で覆ってスケールを開かなくしたりする加工が施されているんですね。
縮みの原因のスケールがそもそもなかったり、開かなかったりするのであれば縮みのリスクを大幅に減らすことが出来そうです。
縮みのリスクが減ったからと言ってウールを洗濯機の普通コースでガシャガシャ洗うのは避けて下さいね!
風合いが変わったり、型崩れが起きたりするのでウールのご家庭での洗濯は手洗い(押し洗い)、または洗濯機の手洗いコース(ドライコース)でデリケート衣類用洗剤の使用がマストです。
「技術の進化すごいな!何だかウールが洗いたくなってきた!」
そんな方の為に私、気合を入れて書いちゃいました。
洗濯表示さえOKならお持ちのウールをご紹介の方法で問題なく洗えると思いますのでご興味のある方は是非ご一読を。
面倒な場合はクリーニングもありますよ~。