パタゴニア再生計画最終回は最大の難関である変色直しに挑戦します。
今回は少し長くなりますがお付き合い下さい。加えてパソコンの調子がおかしく段落が変な所で変わったりと読みづらい所がありますのでご了承下さい。
さて本題の変色ですが私のパタゴニアの変色は衣類の全体に及びます。
しかも変色している部分と元の色が残っている部分があり迷彩柄のようになっています。
通常、当店ではお客様の衣類に変色があった場合、「色掛け」という技術を用い、変色を修正します。
色掛けについてはまた別の記事で詳しく書こうと思っていますがざっと説明をすると下の写真のように
色が抜けてしまったり、変色してまった衣類を色を足すことにより復元する技術です。
今回の私のパタゴニアの場合もこの色掛けで復元が可能なのですが変色が衣類の全体に及ぶため膨大な時間と労力が必要となります。
そのような場合は「色掛け」ではなく衣類全体を染料を使って染める「染め直し」を行います。全体的に落としきれないシミがある時も同様でより濃い色で全体を染めしまうのです。
しかしここで1つ問題が。
私のパタゴニアの生地はポリエスエル100%。
ポリエステルは非常に染色が難しい素材で染色するには130度の高温+高圧が必要です。130度+高圧、、。専用の機械が必要でとても個人で再現できるようなレベルではありません。
さてどうしたものか、、。
ネットを彷徨っていると、、。
「ポリエステルダイ」という奇跡の商品を発見します。
なんとこの染料、90度でポリエステルを染められるとのこと!しかも圧力なしで、、。
「ほんとに染まるのかな?」
無駄な知識があるせいでにわかに信じがたい自分を恥じつつどんなリスクがあるか等聞きたいこともあったので製造元の桂屋さんに電話で問い合わせてみることにしました。
「どんなリスクがあるのか?」
質問したところ
①中綿が痛む可能性がある。=保温性の低下
②内部に残った染料が雨などでずぶ濡れになった場合しみ出してくる可能性がある。
とのこと。
私のパタゴニアは中に化学繊維の綿が入っていて厚みもある。Tシャツなど薄手のものはうまく出来るが中綿が使われている衣類はやめておいたほうがいいとのこと。
「了解しました。」
ともう素直に言えない自分がいます。
「ここまできたら染めてみたい!」
とても親切に丁寧にいろいろ教えてくれたのにごめんなさい。
好奇心に身を委ねます。
ここでリスクについてもう1度考えます。
私のパタゴニアの中綿にはプリマロフトというダウンに似せた極細の化学繊維が使われていて90度とはいえ高熱に長時間さらされる訳なのでボリュームがなくなるなどのリスクは十分に考えられます。
ただこのプリマロフトは板状に割と圧縮されたような形で封入されているので多少のダメージがあったとしてもペチャンコになって保温力が全くなくなるほどにはならないだろうと判断します。たとえペチャンコになっても使用する覚悟は出来ています。
次に色が出てくる可能性については衣類の内部に染料が残らないよう入念すぎるほど濯ぎをしてみます。それでも出てきたら仕方ない。諦めます。
※やめたほうがいいと止められたにもかかわらず好奇心が上回り強行する形になりますので結果がどうなろうと完全に自己責任となります。
もしこの記事を読んでご自分で染め直しにチャレンジしようと思ってくれた方は自分の衣類の染め直しによるリスクを知り、受け入れた上でチャレンジするようにして下さい。
前置きが長くなりましたがここからいよいよ実際の「染め直し」の作業に入ります。
90度で染められると喜んだはいいもののなかなか骨の折れる作業でした(^^;)
誰かから借りなきゃダメかなと思っていたコンロ。なぜか家にありました。こいつを使用し90度まで温度を上げます。
鍋は以前Yシャツの糊を煮る時に使用していた巨大な鍋を使用します。火力が思ったより弱く、なかなか温度が90度まで上がらないので蒸気を使って短時間で温度を上げました。
別のバケツに熱湯を入れ、染料を溶かします。染料の量は染める衣類の重さによって変わるとのこと。私の場合は染料を3つ使いました。
先ほど90度まで上げたお湯に「濃色促進剤」なる粉末を投入。お湯の量は30ℓです。
さきほど溶かした染料を投入し、2つをよく混ぜます。
いよいよパタゴニアを投入
火力が弱い+気温が低く、風が強かったので温度が80度までしか上がりません(-_-;)
諦めてじっくりことこと煮込みます。時々ふたを開けてかき混ぜてやります。
※説明書には30分煮込むと書いてあります。私の場合は3倍の染料を使っているのと厚みのある製品だったのでしっかり染めるため完全な自己判断で1時間半煮込みました。
煮る作業が終了したら冷ましの作業です。ポリエステルは急激な温度変化に弱いので60℃くらいのお湯につけ時間をおいて冷まします。
台所用液体中性洗剤で洗いの作業です。40℃くらいのお湯で洗いました。
お次はすすぎの作業です。水が透明になるまで徹底的に濯ぎました。
日陰で自然乾燥。ちなみに胸のブランドタグは染める前に取り外し、乾燥後縫い付けています。
直接染めた訳ではないのにゴム手袋がここまで染まっています。これは期待できそう。 さてうまくいっただろうか、、。
after
before
ミラクル!!!
明らかに色の段差がなくなり綺麗に染まったのがお分かり頂けると思います。
「ポリエステルダイすげぇ、、。」
達成感に浸っていると1つ大事な作業が残っていたことを思い出します。
色が出て来ないか確認の作業です。1度洗濯機でしっかり洗い脱水をかけずにビチョ濡れの状態のパタゴニアをグレーのパーカーに着せます。
特に染料が残っていそうなポケットにはタオルを入れて一晩寝かせます。
果たして、、。
全く問題ありません!
ポケットも問題なしです!
奇跡的に色が出てくることもありませんでした。今後、万が一色が出てくる可能性もありますのでしばらくの間は注意深く様子を見てみることにします。
完璧だ!
とここで締めくくりたいところですが
スソのコードを止めておくプラスチックの部分。動きません。
チャックの上げ始めに少し引っかかりがあります。1度引っかかりがあるのみで後はスムーズです。
どうやらプラスチックの部分が熱により影響を受けたようです。
使用していて特にストレスを感じない程度なのでそのままにしておきます。
ストレスならば交換も出来る部分です。
あと1つ。
懸念していた中綿ですが若干ボリュームがなくなっています。
before
after
これについては覚悟していたことなので仕方がないと受け入れていたのですが日を追うごとにボリュームが復活してきている気がします。
中綿が痛んだのではなくシワを伸ばすために強めにかけたアイロンが一時的にボリュームを失わせているのかも?
完全復活を期待してこれも今後様子を見ていきたいと思います。
保温力の方も冬を越せるくらいバッチリあります。
「染色って楽しい!」
完璧とは言えませんでしたが著しく機能を損なうことなく個人的には大満足の結果となりました。
今回でパタゴニア再生計画は最終回の予定でしたがあと1回全体のまとめを次回お送りしたいと思います。
今回でまとめようと思っていたのですが長くなってしまったので^^;
よろしかったらお付き合い下さい。