久しぶりの「深掘り」シリーズ。今回はずっと書きたいと思っていたエマールについての記事となります。
CMなどで良く目にする洗剤ですが結局どんな洗剤なのかいまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。
「何が洗えるの?」「使い方は?」ギモンは尽きません。
という事で今回はよく見るけど謎多き洗剤、エマールを慣れていない方にも分かるよう、ゼロから徹底深掘りしてみます。
今回の記事は洗濯表示の基本がある程度分かっていると内容がスムーズに入ってくると思います。「曖昧だなあ。」という方は最初の方の「洗い方」の洗濯表示を頭に入れるだけで大丈夫なので下の記事をまずは読んで頂いてから本文を読んでみて下さい。
どんな時に使うのか?
さて、いまいち謎な洗剤エマールですが「どんな時に使うのか?」これが分かると一気にその正体が掴みやすくなります。
エマールは洗濯洗剤のジャンルで言うと【おしゃれ着用中性洗剤】という名前で呼ばれています。おしゃれ着を洗う用の洗剤ということですね。
おしゃれ着とは何でしょうか?
製品の裏面の説明にも書かれているように「ニット」「カットソー」「スカート」などデザイン性が高く、繊細な造りの”デリケートな衣類”=おしゃれ着と考えると分かりやすいのではないでしょうか。
この”デリケートな衣類”を普段使っている洗剤を使い、洗濯機の普通コースでガシガシ洗ってしまうとどうなるでしょうか?
「色落ち」「縮み」「型崩れ」、、。あらゆるトラブルがお持ちの衣類に降りかかる可能性が特大です。
”デリケートな衣類”は優しい成分の洗剤+優しい洗濯コースで洗ってあげる必要があるんですね。
そんな時に使いたいのが今回ご紹介しているエマールのような【おしゃれ着用中性洗剤】という訳です。
エマールは『普段の洗濯ではダメージを受けてしまうような”デリケートな衣類”を洗う時に使う洗剤』である。
少しだけピンと来て頂けたでしょうか。
洗えるもの・洗えないもの
エマールは『”デリケートな衣類”を洗う時に使う洗剤』である事は分かりました。では具体的にどんな衣類が洗えて、また洗えないのでしょうか?
製品裏面の[用途]、[ピンクの□]部分を見ると何が洗えて洗えないかが分かります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
用途
[用途]とはどんな繊維の衣類が洗えるかを私たちに教えてくれる区分です。
毛(ウール)・絹(シルク)・綿・麻・合成繊維(化学繊維)の衣類が洗えるとなっていますね。
今まで数多くの洗剤を深掘りしてきましたがウール・シルクが洗える洗剤は初めての登場となります。
”デリケートな衣類”でもまだピンとこなかった方はここで完全にピンと来ていただけたのではないでしょうか。
ウール、シルクの衣類は”デリケートな衣類”の代表格ですからね。
『エマールはウール、シルクなどのデリケートな衣類が洗える洗剤』
感じていたエマールのモヤモヤ。少しづつ晴れて来たのでは?
ピンク□
お次はピンク□です。
ピンク□内の洗濯表示の衣類は洗えません。
「家庭での洗濯禁止。」の意味ですから当然ですね。
裏を返せば特殊な場合を除いて家庭で洗濯できる衣類はすべてエマールで洗濯出来るという事です。
懐が深いですね。
まとめます。
まとめ
エマールは
①毛(ウール)・絹(シルク)・綿・麻・合成繊維が洗える
②下の洗濯表示の衣類は洗えない
なぜウール・シルクが洗えるのか?
『エマールはウール、シルクなどのデリケートな衣類が洗える洗剤』と言う事が分かりました。
なぜ他の多くの洗剤では洗えないウール・シルクをエマールは洗う事が出来るのでしょうか。
その謎はエマールの[液性]、[成分]を見ることで解き明かすことが可能です。
液性
エマールの液性は中性です。この「中性」であることがウール・シルクを安心して洗える理由の1つです。
なぜでしょうか。
洗濯洗剤には大きく分けて「弱アルカリ性」「中性」の2種類の洗剤があるのですが、ウール・シルクなどのタンパク質が主成分の繊維はアルカリ性に弱いという特徴があるのです。「弱アルカリ性」の洗剤はウール・シルクにダメージを与えちゃうんですね。
一方、「中性」はウール・シルクにダメージを与えません。
成分
お次は成分を見ていきましょう。
界面活性剤、PH調整剤、安定化剤、酵素と極めてシンプルな成分構成となっています。
同じ花王のアタックリセットパワーの[成分]です。
エマールがいかにシンプルな成分構成かお分かり頂けると思います。
アタックリセットパワーはアルカリ剤、漂白剤などのパンチ力の強い成分を加えることにより洗浄力を極限まで高めた、いわば超攻撃型の洗剤です。汚れをすこぶる良く落としてくれるのですが攻撃力が高すぎるのが玉に傷。汚れだけではなくウール・シルクにまでダメージを与えてしまう洗剤です。つまりアタックリセットパワーではウール・シルクは洗えません。
一方、エマールはパンチ力の高い成分を省き、攻撃力を極限まで下げているので、ウール・シルクにダメージを与えることなく洗濯をすることが可能です。成分構成が優しいのでウール・シルクが洗えるんですね。ただしアタックバイオパワーに比べ洗浄力はかなり低めです。
衣類への優しさを第一に考えた結果、洗浄力を犠牲にした洗剤がエマールなんですね。
まとめ
エマールは「中性」で優しい成分構成の為、ウール・シルクを洗う事が出来る。ただし洗浄力は低め。
エマールの「使い方」
さていよいよ今回の記事の一番のポイントであるエマールの「使い方」についてのご紹介です。
これに引っかかっている方も多いのではないでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
「洗い方」が大事
今まで学んできたように、エマールは『ウール、シルクなどの”デリケートな衣類”が洗える洗剤』です。
例えばお持ちのウールのセーターを洗いたいと考えた時、今の皆様なら
「エマールを使おう!」
こう思えるはずです。
ではエマールで洗おうと決意したそのウールのセータをどうやって洗えばいいのでしょうか?
洗濯機の普通コースでガシャガシャ洗っていいのでしょうか?
答えはお持ちの衣類の洗濯表示にあります。
例えば洗いたいウール100%のセーターが
こんな洗濯表示だった場合。
赤丸の洗濯表示の意味は「液温は30℃を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯ができる。」ですのでエマールを使い、洗濯機の手洗いコース(ドライコース)などの優しいコースで洗うと良いでしょう。
ウールは洗濯機の普通コースでガシャガシャ洗ったり、手洗いでも揉み洗いをしたりすると縮んだり、硬くなったりしてしまう素材です。洗濯の際は特に気を付けて優しく洗ってあげることを意識してください。
こんな場合はどうでしょう?
ウルトラライトダウンの洗濯表示です。
ダウンもウール・シルク同様デリケートな素材ですのでここでもエマールを使うという選択肢が第一に上がります。
表示の意味は「液温は40℃を限度とし、手洗いができる。」ですので実際に洗濯桶を使い優しく「手洗い」をしてやればいい訳ですね。
繰り返しになりますがエマールは『ウール、シルクなどのデリケートな衣類が洗える洗剤』です。
いくらデリケートな衣類が洗えるからといって[ウール→エマール→洗濯機にポンで普通コースで洗い]といった思考は危険です。
落ち着いて洗濯表示を確認し、必ずその指示に従うようにしてください。そもそも”デリケートな衣類”を洗おうとしているのでその表示はほぼ100%で「優しく洗ってね」を指示しているはずです。
『エマールは「優しい洗い」とセットで使う。』
”デリケートな衣類”を洗う時は使う洗剤だけでなく洗い方も大事なんです。
私だったらこんなものを洗います
エマールの謎、大方解けてきたのではないでしょうか。ここまでくるとお持ちの実際の衣類の何をどのように洗うか気になってきますよね。
私だったらエマールを使って写真のような衣類を洗います。
《①ウール100%のセーター》
意味:「液温は40℃を限度とし、洗濯機で弱い洗濯が出来る。」
→手洗いコース(ドライコース)で洗濯
《②アクリル55%・綿45%のカーディガン》
意味:「液温は30℃を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯が出来る。」
→手洗いコース(ドライコース)で洗濯
《③綿100%のセーター》
意味:「液温は40℃を限度とし、手洗いができる。」
→手洗い
少し「?」な感じでしょうか。どんな基準でエマールを使うかを判断したのかが分かりづらいですよね。
私の場合は「素材」、「作り」、「色」が”デリケート”だったらエマールを使います。
①のウールはデリケートな「素材」なのでエマールを使いました。②、③は素材的にはデリケートではないですがザックリと編んだ型崩れしやすそうな「作り」なのでエマールを使って優しく洗ってやりたいという訳です。③は「作り」に加えて「濃色」なので色落ちを起きにくくする為にもエマールを使用しています。エマールは普段使いの洗剤に比べて色落ちのリスクも少ないです。
「素材」「作り」「色」から総合的に判断してエマールを使うと決断→洗濯表示に従って洗うといった流れです。
慣れないうちはここの所の判断が難しいかもしれません。”デリケート”の基準って分りにくいですもんね。
最初のうちは「洗濯表示が弱い洗いを指示→エマールを使って弱い洗いをする。」のパターンでも良いかもしれません。そのうち衣類を見ただけで「これはエマールだな。」と分かるようになります。
洗浄力
最後は気になる方も多いはず。エマールの洗浄力を見て行きましょう。
ファンデーションは油汚れ=「皮脂」
卵はタンパク汚れ=「食べ物」
カレーは色素汚れ
を想定しています。
覚えていらっしゃるでしょうか?エマールは衣類への優しさを第一に考えた結果、洗浄力を犠牲にした洗剤です。
はたしてどの程度の洗浄力なのかな?
30℃のぬるま湯にエマールを規定量投入し手洗いコース(ドライコース)で洗濯しました。
先ほども書きましたがエマールは優しい洗いとセットで使うのが基本です。普通コースではなくあえて手洗いコースで洗っています。
果たして結果は?
うん!全然落ちてません!
でもこれでいいんです!これがエマールなんです!
手洗いコースで洗っていますし、これくらい洗浄力が低くないと”デリケートな衣類”は怖くて洗えないんですね。
同じ花王製のアタックゼロの洗浄力を比較の為に載せておきます。
やはりその差は歴然ですね。
エマールで洗う時は必ず前処理
エマールの洗浄力、良~くお分かり頂けたと思います。
ご覧頂いた通りの洗浄力ですから1日着用してエリに付いたファンデーションや食べ物汚れなどは何もせず洗濯機にポンだとほぼ100%落ちません。
汚れた衣類をエマールで洗う時は汚れを前もって落としておく「前処理」が必須です。
「前処理」は写真のように台所用中性洗剤かクレンジングオイルをシミ部分に塗りつけて歯ブラシで叩いてやる方法が良く落ちるのでオススメです。
*色落ちの可能性が0ではありません。心配な場合は色落ちテストをしてからの作業をオススメします。
【まとめ】とりあえずウールのセーターを洗ってみよう!
いかがだったでしょうか。いつになく長い記事となってしまいました。
そして情報が少し多すぎましたね^^;
お伝えしなくてはならない大切なポイントが多い事もエマールを分かりづらくしている1つの原因かもしれません。
しかしエマールは理屈を理解し、うまく使えるようになると洗濯の幅を大きく広げてくれる大変便利な洗剤です。
今まで自宅では洗えないと思っていた衣類が洗えちゃうんです。うまく使わない手はないですよね。
まずは一番大事な
『エマールは優しい成分構成なのでウール・シルクなどのデリケートな衣類が洗える洗剤。』
『エマールは優しい洗いとセットで使う。』
を頭に入れて頂き、初めの1歩としてお持ちのウールのセーターを実際に洗ってみてはいかがでしょうか?
実際に使っているうちにボンヤリとその本質が見えてくるはずです。
「干し方とか分かんないよ!」
ご安心を。
ウールのセーターの手洗いの仕方、洗濯機での洗い方を私、以前記事にしております。
そちらを参考に是非、エマールを使った「一歩先行くお洗濯」をお楽しみください。
[応用編]も是非!
「ダウン」、「リュック」、「ぬいぐるみ」から「革ジャン」まで洗ってます。
エマール – クリーニング屋2代目のブログ (cleaning-hayashi.com)