前回はゴアテックスのレインウェアのメンテナンスについてご紹介しましたが今回はゴアテックスってそもそも何?何がすごいの?仕組みは?などについて書こうと思います。
ちょっと個人的興味が入ったマニアックなお話になってしまう可能性がありますがよろしくお付き合い下さい。
ゴアテックスとは?
ゴアテックス(GORE-TEX)とは、アメリカのWLゴア&アソシエイツ社が製造販売する「防水透湿性素材」の商標名のことを言います。
ゴアテックスといえばやはり「防水」のレインウェアのイメージがありますよね。「透湿」については後に詳しく説明します。
その前にゴアテックスの原料について少々。
ゴアテックスという名前から何やら科学的な原料をイメージしがちですが意外や意外、「蛍石」という天然鉱物が原料となっております。
この石に科学的な処理をしてフッ素を抽出し、それを引き延ばして加工することによってゴアテックスが完成するのだとか。
こうして蛍石は最終的に非常に薄い膜(0.01mm)となり「ゴアテックスメンブレン」と呼ばれレインジャケットなどに使われて私たちの生活を助けてくれている訳です。
ゴアテックスは身近なアウトドアウェアだけではなく宇宙服、自動車部品、人工血管までにも使われているらしいですよ!
何がすごいの?
「ゴアテックスはすごい!」「登山にゴアテックスはかかせないよ!」
なんて話をよく聞きます。
一体、ゴアテックスって何がすごいんでしょうか?
ゴアテックスのすごい所はズバリ、外からの水は防ぎ(防水)つつ内部の水蒸気は逃がす(透湿)という2つの機能を両立した所でしょう。
コンビニの透明の雨ガッパを想像してみて下さい。雨ガッパは確かに雨を防いで外からの水を内部に通しませんが少し自転車でも漕ごうものならあっという間に内側がビチョビチョになってしまいまよね。
外からの水は確かに防いでいるのに内側が濡れてしまうというのはどういうことでしょうか?
お分かりの方も多いかもしませんね。あれは私達の体から出た水蒸気が外に逃げられず内側にたまり濡れているのです。
街で自転車を漕ぐ程度ならさして大きな問題ではありませんがこれが極寒の登山中に起ってしまうとなると話が変わってきます。内側に溜まった水分が一気に冷やされ低体温症を起こ可能性があるんですね。
外からの水は防いでいるのに結局自身の水蒸気で濡れてしまうジレンマ。
これを見事に解決したのがゴアテックスなんです。
「何でそんなことが出来るの?」
気になりますよね。詳しく見ていきましょう。
仕組み
では具体的にどのようにして外からの雨を防ぎつつ内部の水蒸気を逃がしているのでしょうか。
その仕組みはいたってシンプルです。
上の画像のピンク色の部分がゴアテックスです。正確には先ほども書いた通り「ゴアテックスメンブレン」といいます。
このゴアテックスには水滴の大きさの2万分の1、水蒸気の大きさの700倍の大きさの穴のような物(孔)が空いています。
「水滴より小さい孔なので外からの水を通さない。水蒸気よりは大きい孔なので内側の蒸気は通す」
絶妙な孔の大きさが「防水透湿性」を見事に実現しているんですね。
ちなみにこのゴアテックスメンブレンには1平方cmあたり14億個もの孔が開いているらしいですよ!
ゴアテックスのすごさは十分すぎるほど分かりました。
お次は具体的にどのような形で製品に使われているのか、レインジャケットを例に見ていきましょう。
少しマニアックなお話になりますがゴアテックスのレインウェアのご購入を考えられている方にも役立つ情報だと思いますのでよろしかったら引き続きお付き合いください。
ゴアテックス製品は大きく分けて3種類
最初の方にご紹介しましたがゴアテックスは0.01mmの非常に薄い膜です。
膜のみでは登山はもちろんのこと、ちょっとしたお買い物でもすぐに破れてしまいますので表地や裏地などと貼り合わせることによって耐久性を持たせ製品化されています。
表地、裏地の組み合わせて様々な種類の製品が作られているのですが大きく3種類のクラスに分けて製品化されています。
これが分かればゴアテックス製品選びがずいぶん楽になりますよ!
3レイヤー
ゴアテックスの両側に表地と裏地を貼ったものを3レイヤーと言います。
「3レイヤーのレインジャケット」なんて言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
表地、ゴアテックス、裏地の3層構造なのでスリー(3)レイヤー(層)と言われている訳ですね。
厚みのある生地でゴアテックスを挟んでいる作りなので「耐久性が高い」ことが特徴です。また、裏地が生地になっているので「肌触りが良く、汗離れが良い」という特徴もあります。
最もよく見る基本的なタイプですね。
2.5レイヤー
3レイヤーの裏地の代わりにコーティングを施したものが2.5レイヤーです。
裏地がなくゴアテックスに薄い膜のようなコーティングを施した構造なので3レイヤーに比べ「軽量&コンパクトに折りたためる」点が特徴です。反面、3レイヤーに比べて耐久性は劣ると言われています。
2レイヤー
もうお分かりですね。ゴアテックスと表地のみは2レイヤーと呼ばれます。
2層の構造なので3レイヤー、2.5レイヤーに比べ「柔らかくて動きやすい&軽い」事が特徴です。
動きやすさ、軽さはピカ1ですが耐久性、汗離れの良さは3レイヤー、2.5レイヤーと比べてやはり劣ってしまうようです。
まとめるとこんな感じでしょうか。
レイヤーの数字が上がるほど耐久性、快適性は増しますが軽量性、動きやすさは下がります。反対に数字が下がるほど軽量性、動きやすさは増しますが耐久性、快適性が失われてしまいますね。
何とも悩ましい所ではありますが、自分がゴアテックスのレインジャケットに何を求めるのか?をしっかり考える事が大事ですね。
なぜ洗濯&撥水加工が必要なのか?
最後に本業のメンテナンスについて少々。
ゴアテックスのレインウェアには洗濯&撥水加工が必須と言われています。
なぜでしょうか?
表地の撥水性が落ち、全体に水が広がってしまっている状態の写真です。
ゴアテックスは「防水性」のある素材ですのでこの状態でも水が中に侵入することはありません。問題なのは内側の水蒸気を逃がしてくれる「透湿性」です。
写真の状態を図にしたものです。
表地の水がコロコロと水滴となっている状態では湿気は衣類の外へとスムーズに抜けていってくれるのですが撥水性が落ち、表面を水が覆うような状態になっていると内側の水蒸気が外に逃げられず結局は雨ガッパと同じ状態になってしまうのです。
皮脂やタンパクなどの汚れもこれと同じ状態を作ります。
洗濯&撥水加工がいかに大事かがお分かり頂けたと思います。
表面を洗濯でキレイに保ち、撥水加工をしてコロコロの水滴を作ってやることでゴアテックスの武器である「防水透湿性」は最大限に発揮されるという訳です。
ゴアテックスの洗濯の仕方については以前記事にしています。ご興味のある方はそちらも是非。
と言う事で今回はゴアテックスについて予想外に深掘りしてしまいました。
私自身もゴアテックスを愛用しており興味のある分野だったものでつい、、(汗)
長々とお付き合い頂きありがとうございました。
この記事がいまいち分かりづらかったゴアテックスのモヤモヤを少しでも晴らせていたら幸いです。